粒子イオンエンジンの開発に成功した人類はその行動範囲を一気に外宇宙へと広げ、これより宇宙歴元年が始まる。
宇宙歴362年、宇宙嵐により遭難した探査船が、地球と良く似た大気を有している無人惑星を偶然発見し、過剰な人類膨張による地球資源枯渇を鬱れいた世界政府によって、宇宙への移民が推奨されることとなり、その後も続々と移民可能な惑星が発見されるにつれ、今度は地球の過疎化が危惧される程に人類の宇宙への流出が加速していく。
宇宙歴1341年、この頃には移民可能惑星数が9つを数えるようになり、人類の中心はとうに地球を離れ、世界政府は移民惑星郡のほぼ中心に位置していた移民第3惑星へと移転していた。
ただし、これはあくまでも体裁としての世界政府であり、各々の惑星間が数百光年から数千光年程も離れている以上、実質の自治は各々の惑星で勝手に行われていたというのが実状である。
宇宙歴1782年、移民可能惑星郡の中では最も辺境に位置していた、移民第9惑星「ミトナル(Mitnal)」で、かつてその惑星に先住民がいたことを示すOOPARTS(Out-Of-Place Artifacts)が続々と発見され、人類を驚愕させる(驚くべきことに、ここまで宇宙に手を広げた人類でさえも、人類以外の生命体とコンタクトすることは無かったのである)。
惑星「ミトナル(Mitnal)」で発見されたこれらOOPARTSの中には、明らかに航行能力を備えた宇宙船が含まれていることが発覚し、粒子イオンエンジン以降実質頭打ちとなっていた宇宙航行技術の進歩を名目に、この未知なる宇宙船団の研究が第3惑星世界政府と第9惑星自治政府共同で行われることとなる(真の理由は、第9惑星自治政府がこれらOOPARTSを利用して不用な軍備拡大をするのではないかという、世界政府の危惧のためではあったが)。
こうしてOOPARTSの技術と人類科学との融合結果により、これまで存在したどんな戦闘機より遙かに強力な多目的型戦闘機「イツァムナ(Itzamna)」が誕生する。
しかし、世界政府と第9惑星自治政府との蜜月はこの戦闘機開発成功により終焉を迎えることとなった。
この軍事バランスを変える程の能力を秘めた戦闘機「イツァムナ(Itzamna)」の存在は、各惑星間に不要な緊張を招く不安材料となりうると考えた世界政府は、「イツァムナ(Itzamna)」に関する技術全ての隠匿・破棄を主張したが、第9惑星自治政府はこれに反発、「イツァムナ(Itzamna)」を有効利用し、全移民惑星を外敵から守る防御機構を発足するべきだと主張する。
しかし、現実として「外敵」などは存在しておらず、第9惑星自治政府の主張する「防御機構」はすぐに本来の目的を失い、他移民惑星への「侵略」に利用されると危惧した世界政府は、第9惑星自治政府の主張を即座に却下し、かつ、OOPARTS研究の無期延期を発表した。
これを受けた第9惑星自治政府は、世界政府のこの処置は「人類の保護」と「人類の進歩」双方に対する責任放棄だと糾弾、世界政府に変わる「新たな秩序の発足」を掲げて独立を宣言。世界政府に宣戦布告する。
第9惑星自治政府のこの宣言の裏には、宇宙戦艦・空母クラスのOOPARTSが続々と発掘され、移民惑星随一の軍備を既に有していたという自信の裏付けがあった。
かくして、辺境の小惑星でしか無かった移民第9惑星「ミトナル(Mitnal)」は、既に失われし技術発掘により最強の軍備を有する武装国家として人類に敵対することとなり、世界政府は破棄寸前だった戦闘機「イツァムナ(Itzamna)」数機のみを頼りに、戦争の渦中へと足を踏み入れるととなった・・・
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